太陽発電衛星の静止軌道への軌道遷移法

研究背景・先行研究

 宇宙太陽光発電衛星は静止軌道上の1万トン級大型宇宙構造物として構想されている.宇宙太陽光発電衛星建造の輸送コスト削減のため軌道間輸送機の使用が検討されている.しかし,既存の軌道間輸送機モデルでは輸送に時間がかかってしまうため,太陽光パネルのように放射線の影響を受ける部品について,バン・アレン帯の通過時間を短くすることが求められている.また,これまでテザーシステムを用いて運動量変換による軌道遷移技術が研究されてきたが,これを宇宙太陽光発電衛星の建設を前提とした軌道間輸送機として応用したときの軌道維持については十分に検討されていない.

SDDLでの研究成果

 本研究では,宇宙太陽光発電衛星の建設を前提としテザーを用いた軌道間輸送機の軌道および実現可能性を検討し,システム構成パラメータのコストへの影響を明らかにすることを目的とする.まず解析に用いるための軌道間輸送機モデルを作成した.またホールスラスタの仕様を設定し,スラスタによるヨー回転について概算や軌道制御の解析を行い,必要となる時間と推進剤の消費量を見積もった.軌道制御では電気推進系の最適推力問題を解くことで推進剤の消費量を最小にするような軌道を求めた.さらに,提案手法の輸送コストを評価した.輸送コストの評価では,化学推進の2インパルス軌道遷移の場合と従来の軌道間輸送機案の場合と比較した.評価関数として,地球低軌道に投入したときの質量の合計値を設定し,これら3つの手法ごとに計算を行った.
 
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