多機能展開膜面上でのアレーアンテナ技術

研究背景・先行研究

 人工衛星に搭載されるアンテナは,地上との通信や地表の観測など幅広い分野で活躍している. アンテナは開口直径を大きくすることでその性能が向上するが,人工衛星においては打ち上げる際の質量・体積の制限から地上で収納し,軌道上で展開する展開型アンテナが主に採用される. 一般的に平面アンテナではその平面精度,パラボラアンテナではその鏡面精度がアンテナの性能に大きく影響するため,既往の研究では高い平面精度や鏡面精度を前提として進められており,軌道上でそれらを達成するために金属平板上にアンテナを構築したり,大きな支持構造を用いてアンテナの形状を維持している. これに対して,本研究室で開発されたOrigamiSat-1に搭載された展開膜構造では,その柔軟性のため平面精度は低いが,収納効率が非常に高く,この展開膜構造をアンテナとして利用できた場合,従来の展開アンテナに比べ,その展開面積は10倍以上に飛躍的に向上できる. そこで本研究室では平面精度は低いが展開面積を大きくできる展開膜構造へのアレーアンテナの構築を目指し,アクティブに放射位相を制御することによってアンテナの変形を補償する手法を提案し,解析および実験的にその実現可能性を検証している.
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SDDLでの研究成果

 本研究室では,この多機能展開膜上でのアレーアンテナに関する研究を東工大電気系電気電子コース廣川研究室と共同で2019年度から行っている. 2019年度は主に,平面精度の低い形状でもアクティブな位相制御によって平面状態のアレーアンテナと同等程度の性能が出せるかを解析および実験的に検証した. 2020年度からは廣川研究室の学生も加わり,坂本研究室では主に,運用を考えた際のアレーアンテナの制御手法の開発や軌道上での多機能展開膜形状の計測手法の開発を行う予定である.
 
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発表論文

[1] K. Omoto, T. Tomura, H. Sakamoto, J. Hirokawa, M. Okuma, "Basic Study on Deformation Reconfiguration Technology for 5.8-GHz-band Reflectarray Antennas," 42nd PIERS, Xiamen, China, Dec. 17-20, 2019.
[2] 大本圭祐, 坂本啓, 戸村崇, 広川二郎, 大熊政明, 「非平面度補償5.8GHz帯アクティブリフレクトアレーの試作と評価」, No. 2H01, 第63回宇宙科学技術連合講演会, 徳島県徳島市, 2019年11月6-8日.
[3] T. Tomura, K. Omoto, H. Sakamoto, J. Hirokawa, "Design and Validation of a 5.8-GHz-band Active Reflectoarray on Nonflat Structures for CubeSats," 40th ESA Antenna Workshop, Noordwijk, Netherlands, Oct. 8-10, 2019.
[4] K, Omoto, H. Sakamoto, T. Tomura, J. Hirokawa, M. Okuma, "Design and Analysis of a 5.8-GHz-band Active Reflectarray on Nonflat Space Structures," No. A1-3, 11th Multidisciplinary International Student Workshop, Tokyo Tech (MISW2019), Meguro-ku, Tokyo, Japan, Aug. 7-8, 2019; also presentad as No. D11, Asia-Oceania Top University League on Engineering (AOTULE) Conference, Meguro-ku, Tokyo, Japan, Nov. 25-27, 2019.