ランデブーを考慮した宇宙物流モデル

研究背景・先行研究

 世界初の人工衛星スプートニクの打ち上げから60年以上経過し,ますます複雑化する宇宙ミッションをより効率よく遂行するために,宇宙ミッションそのものの設計・最適化への需要が高まっている.宇宙ミッションの設計・最適化手法として過去には主に,宇宙機の軌道設計を応用した手法,およびミッションを宇宙空間の物流問題として扱う宇宙兵站学(Space Logistics)と呼ばれる二種類の方法が研究されてきた.しかし,新宇宙ステーション,月軌道プラットフォームゲートウェイの建設,故障した宇宙機の修理,有人火星探査を代表としたランデブーを要する複雑な将来の宇宙ミッションの設計・最適化を行うには,前者の軌道設計は計算負荷が大きすぎ,後者の従来の物流モデルは宇宙機のランデブーにより生じるコストを無視してきたため信頼性が低いという問題がある.本研究はこれらの先行研究で設計・最適化不可能であったランデブーを要する複雑な将来の宇宙ミッションへの応用が可能な,新たな宇宙ミッション設計・最適化手法を提案する.

SDDLでの研究成果

 近年のSpace Logisticsでは宇宙ミッションをネットワーク問題として解いてきた.本研究室とジョージア工科大学のSpace Systems Optimization Groupは最新のネットワークモデルであるTime-Expanded Networkに,ランデブー問題を考慮する際に必要となる待ち時間のモデルを組み込み,新たな物流モデルを構築した.この新しいモデルを用いて月低軌道上にある宇宙ステーションへの人員輸送問題を最適化し,ランデブーのコストと,軌道設計との関係性を示した.今後はより複雑なケーススタディを行い,本モデルの改良を続ける方針である.
 
 0  0                    

発表論文

[1] K. Ikeya, H. Sakamoto, H. Chen and K. Ho, “Integrated Orbit Design and Network-Based Optimization of Interplanetary Mission Architectures,” AIAA Paper 2020-0072, Proc. of AIAA Science and Technology Forum and Exposition (SciTech2020), Orlando, FL, USA, Jan. 2020.