
はじめに
「ニュースペース」と呼ばれる新たな宇宙時代が訪れ、宇宙開発が以前よりもより直接的に人類の活動に影響を及ぼすようになっています。どこでもつながる大容量通信、高頻度観測による地球環境や安全保障のセンシング。さらには深宇宙探査や天体観測においても、軌道上に拠点を設けることで、これまで以上に人類の知識を広める活動が可能になっています。
この過程で、宇宙空間にはさまざまな構造物(宇宙構造物)が構築されてきました。今後、ますます宇宙利用や宇宙探査の価値を高めるために、多様な宇宙構造物を構築していくことが求められます。その際、宇宙構造物を「動的」なものと捉え、次の3つの時間軸でその「動き」を考慮することが重要です。
- 構造動力学(ダイナミクス)の考慮: 重力が微小な環境で構築される宇宙構造物は一般に柔軟であり、その振動の影響が無視できません。また、構造材料の劣化などにより、宇宙構造物の動特性や形状は常に変化していきます。
- システムライフサイクルの考慮: あらゆるシステムには、設計・製造・運用・保守・廃棄というライフサイクルがあります。特に地上で製造され、宇宙で運用される宇宙構造物においては、システムが体験する大きな環境変化を考慮することが欠かせません。また、一つのシステムの知見を次世代システムへ継承させることも重要です。
- 社会の価値観の考慮: 人類の価値観も急激に変動しており、宇宙構造物構築の背景にある価値観や倫理観を常に更新することが重要です。
本研究室では、動的なシステムである「宇宙構造物」を構築する方法論を「宇宙動設計学」と呼び、この知識化と体系化を行うと同時に、それを支える構造動力学やシステムズエンジニアリングを始めとする基礎学問のさらなる発展を目指しています。
Back to top研究室のミッション
私たち宇宙動設計学研究室は、宇宙における大型構造物の構築方法論を確立することを目指しています。そのために、以下の取り組みを行います。
- 背景となる物理的な原理を探究し、宇宙構造物の設計・構築に関する新たな学術的知見を創出します。
- 小型衛星を活用した宇宙実証実験を実施し、理論の妥当性を確認しながら実践的な方法論を確立します。
- 研究を通じて次世代のリーダーを育成し、工学の発展に貢献します。
- ニュースペース時代に求められる倫理観を明確にし、持続可能な宇宙開発の在り方を探求します。
つまり私たちは、科学者としての責任を持ち、原理探究と価値実証の両面から、宇宙開発の新しい道を切り拓いていきます。
About SDDL
Welcome to the Space-Structure Dynamics Design Laboratory (SDDL) in the Department of Mechanical Engineering at the Institute of Science Tokyo. The SDDL is involved mainly in space systems research. The objective of the Laboratory is to explore innovative mechanical designs through investigations of dynamical systems and to train young engineers who will lead this field in the future.
For enquiries about lab tour and research collaboration, please contact Professor Hiraku Sakamoto (sakamoto.h.aa [at] m.titech.ac.jp).
超小型人工衛星:OrigamiSatシリーズの開発
当研究室は,2024年現在OrigamiSat-2という超小型人工衛星の開発を行っています.この衛星は3U-CubeSatという規格の超小型人工衛星です.
シリーズの初代となるOrigamiSat-1は2014年度に開発開始,2019年に打ち上げ,その後2022年に軌道を離脱しました.詳しくはorigami.titech.ac.jpをご覧ください.
宇宙動設計学研究室では一緒に衛星開発をしてくれる東京科学大生を募集しています! やる気さえあれば前提知識はいりません.興味ある方はメールでお問い合わせください.(sakamoto.h.aa [at] m.titech.ac.jp)